この仕事、ぜんぶ やさしく説明します

大阪府の「歴史的文書の仮選別支援」/社内の再整理用
2026年10月13日 株式会社IGREK
むずかしい言葉を使わずに、はじめから順に書きました。
1. そもそも何をする仕事なの? 2. なぜ、むずかしいの? 3. 3回の打ち合わせで、何をしてきたか 4. いちばん大きな発見「束でまとめる」 5. 考え方を変えました 6. できないこと(正直に書きます) 7. 今日お願いすること 8. ことばの決まり(社内用)

1そもそも何をする仕事なの?

大阪府の役所には、たくさんの書類(=公文書)があります。 書類には「何年間とっておく」という期限が決まっていて、その期限が切れると、ふつうは捨てられます。

でも、全部を捨ててしまうと困ります。 その中には「これは歴史の記録として残しておくべきだ」というものが混ざっているからです。

だから役所の人は、期限が切れた書類を1つずつ見て、 「捨てる」か「公文書館に残す」かを決めています。
わたしたちは、この作業をAIで手伝おうとしています。
たとえると
体育館いっぱいに、ダンボール箱が 64,454個 置いてあると思ってください。
その中から「捨ててはいけない箱」を見つけ出す作業です。

2なぜ、むずかしいの?

理由① 残すべきものが、とても少ない

64,454
期限が切れた書類の数
1,116
そのうち
残すべきもの
1.7%
その割合
(100個に2個もない)

しかも、この1,116個は、かたまって置かれているわけではありません。 体育館じゅうにばらばらに散らばっています。だから全部の箱を開けて確かめるしかない、というのが今のやり方です。

理由② まちがえたときの重さが、左右でぜんぜん違う

まちがい方どうなるか
残すべきものを、捨ててしまった 二度と戻らない。取り返しがつかない
捨てていいものを、残してしまった 職員の方が見て、あとで外せばいい
ここが、この仕事のいちばん大事なところ
「見落とし」は絶対に出してはいけません。 だから「AIの正解率が何%か」より、「何個見落としたか」のほうが大事です。

理由③ 箱のフタに書いてある名前しか見られない

AIが見られるのは、箱の外に書いてある情報だけです。 書類の名前、担当の課の名前、分類の記号、何年の書類か——このくらい。 箱を開けて中身を読むことはできません。

だから、外から見るとまったく同じなのに、片方は残す・片方は捨てるという箱が出てきます。 こうなると、どんなに賢いAIでも見分けられません。いま、そういう箱が66個あります。

33回の打ち合わせで、何をしてきたか

いつやったこと見つかった数
(1,116個中)
9月9日
1回目
役所の決まり(残す基準19項目)と照らし合わせる仕組みを作った。 さらに「分類の記号」ごとに、これまで何個残されてきたかを手がかりに足した 538個
9月17日
報告会
「過去に同じ名前の書類が残されていたか」を手がかりに足した。 去年「◯◯計画 資料」が残されたなら、今年の同じ名前も残される、という考え方 742個
10月1日
2回目
「課の名前が変わっているか」を手がかりに足した。くわしくは下 785個
10月13日
3回目
数え方そのものを変えた(第4章) —

※「見つかった数」= AIがあやしい順に並べて、上から3,000個(全体の5%弱)見たときに見つかる数

10月1日の発見:「課が変わった」には2種類あった

書類には「いま持っている課」と「もともと作った課」が書いてあります。 この2つが違うとき、最初は「課が変わった」とひとまとめにしていました。

ところが数えてみると、まったく性質の違う2種類が混ざっていました。

どんな変わり方か残された割合
名前が変わっただけ(例:A課 → B課に改称) 0%
1個も残っていない
仕事そのものが引っ越した(例:ある仕事がC課からD課へ) 約19%
平均の10倍以上

つまり「仕事が引っ越した書類」だけが大事なサインでした。 ひとまとめにしていたせいで、この2つが打ち消し合っていたのです。分けたら精度が上がりました。

4いちばん大きな発見「束でまとめる」

大阪府の方から、こう言われていました。

「64,454件を、3,000件くらいに減らせないか」

1つずつ順番に並べるやり方では、これに届きませんでした。 全部を見つけようとすると、結局93%(約6万個)を見ることになるからです。ほとんど減りません。

そこで、並べ方ではなく「まとめ方」を変えてみました

似ている箱どうしを、ひもで縛って「束」にします。 縛る基準は 「同じ課」「同じ分類の記号」「同じ保存年数」 の3つです。

やってみたら
64,454個の箱が、12,677の束になりました。
そして、残すべき箱がどの束に入っているかを数えたら——
12,677
束の数
613
残すべき箱が
入っている束
4,966
その613束の
中身の合計(個)
これが発見です
残すべき箱は、12,677の束のうち613束にしか入っていませんでした。 その613束を全部開けても、4,966個です。

つまり 「64,454個 → 約5,000個」 なら、できます。
3,000個には届きませんが、桁は合います。

じゃあ、残りの約6万個はどうするの?

見ないわけではありません。束ごと、まとめて確認します。

たとえば「人事課の出勤簿」が214個まとまった束があります。 中身は全部同じ形です。これを1個ずつ214回チェックする必要はありません。束ごと1回で済みます。

いまのやり方束でやる場合
1個ずつ中を見る64,454個約5,000〜12,700個
束ごとまとめて確認—12,064回
画面をさわる回数64,454回約17,000回(4分の1)
全部に目が通るか通る通る
言い方をひとことで
「見る数を減らす」のではなく「同じ判断を1回にまとめる」。
だから見落としは増えません。

5考え方を変えました

これまでの説明は、取り下げました
わたしたちは「上位◯件を見れば◯%まで届きます」と説明してきました。
でもこれは、聞いた人には「残りは見なくていい」と聞こえます。

公文書は一度捨てたら戻りません。 「この分は見落としても構いませんか」と役所に聞くのは、こちらの甘えでした。 この形の提案はやめます。

AIの役目を、3つに置きかえました

役目どういうことか
① 見る順番を
決める
全部見るのは変わりません。順番だけ変えます。 いちばんあやしい300個を先に見ると、そのうち85%が当たりです(ふつうに並べると1.7%)。 948個目で、残すべき箱の半分に届きます。
② 人の判断を
二重に確かめる
職員の方が「捨てる」と決めたものの中で、AIが強く「残すべき」と言っているものだけを、 もう一度見るリストにします。この使い方は、見落としを減らす方にしか働きません。
③ 理由が
残る
なぜその箱を上に置いたのか(分類記号・保存年数・課の実績・名前の言葉)を 1個ずつ記録できます。あとから説明を求められたときに答えられます。
人の判断にも、もれはあります
今回のデータの中に、判断そのものが記録されていない書類が44個ありました。 しかもそのうち42個は、すでに「捨てる」の設定になっています。
だからAIを「人の代わり」ではなく「人の二重チェック」に使うのが、いちばん無理がありません。

6できないこと(正直に書きます)

7今日(10月13日)お願いすること

大阪府にしかできない判断は、1つだけです
「判断が記録されていない44個」を、残すか捨てるか決めていただくこと。
うち42個は、すでに「捨てる」の設定になっています。 このままだと公文書館の判断が入らないまま捨てられてしまいます。
これは役所にしか決められないことなので、わたしたちが代わりに決めることはできません。
そのほかは、こちらで結論を出しました
一覧に見当たらない21件/重複していた6組/照合のしかた/分類記号B3/44個の原因/中身の情報の件。 この6つは全部こちらで決めました。ご指摘がなければ、そのまま進めます。 大阪府の方に調べていただく必要はありません。

お借りできると助かるもの(無くても進みます)

8ことばの決まり(社内用)

これまでの反省から、言い方のルールを決めました。資料を書くときは必ずこれに合わせてください。

使わない使う
1,095件を主語にする 1,116件(大阪府が数えた数)。1,095は「そのうち一覧の中にある数」として注記だけ
「回収」(大阪府から使うなと指摘あり)
「出会える」(こちらが勝手に選んだ言い換え。合意なし)
「見つかる」、または件数でそのまま言う
「上限94.3%」 「外から見分けられない箱が66個」(割合ではなく個数で)
「正答率◯%」 使わない。全部「捨てる」と答えるだけで98.3%になるので、意味のない数字です
なぜ言い方にこだわるのか
10月1日に、大阪府の方からこう言われました。
「主語がないから、どれを指しているのか分からない」

実際、こちらの説明には取り違えが2つありました。どちらも 「どの列の話か」を書いていなかったのが原因です。
数字を言うときは、かならず「どの列の・どの課の・いつ時点の」をつけてください。