歴史的文書の仮選別支援 これまでの経緯

大阪府 情報公開課 / 大阪府公文書館 御中 | 2026年10月9日 | 株式会社IGREK 森
第3回ワーキンググループ(10月13日)別添⑤

10月1日のワーキンググループで「最初からどのようにアップデートしてきたか、簡単にまとめたレポートがほしい」 とのご要望をいただきました。これまでの3回でお伝えしてきたことを、この1冊にまとめ直しました。

うまくいかなかったこと、こちらの誤りも、そのまま書いています。 数字はすべて同じ方法(データを半分に分け、片方で学習してもう片方で測る)で出した実測値です。

1いちばん短い要約

やろうとしていること
保存期間が満了した簿冊64,454件の中から、公文書館へ引き渡すべき簿冊を見つける作業を、 職員の皆様がいまより少ない手間で、取りこぼさずに終えられるようにすること。

大阪府が仮選別で「引き渡す」と判断された簿冊は、1,116件です。 このうち1,095件は満了簿冊一覧(64,454件)の中に見つかりましたが、21件は一覧に見当たりません(第8章A)。 当社が機械的に測れるのは、一覧の中にある1,095件だけです。本書の割合は、すべて1,116件を分母にしています。

1,116件は64,454件の1.73%にあたり、全体に薄く散らばっているため、いまは全件を順に見ていくしかありません。

今回あらためてお出しするもの ── 21件が何なのか
10月1日は「なぜ一覧と一致しないのか」という照合の話に終始してしまいました。今回、21件それぞれが何の簿冊なのかを、規程の別表19項目と照合しました。例規4件・叙位叙勲4件・議会2件・総合計画1件・審議会1件・重要な事件1件、別表に当たらないもの8件。とくに一覧から完全に消えている8件は、副首都推進局が3件を占めます(第8章A・別添①)。
64,454
満了簿冊(件)
1,116
引き渡すべき簿冊(件)
うち一覧で突合できたのは1,095件
1.73%
その割合
4,966
いま見えている
最小の確認件数(件)

23回でどこまで進んだか

この資料は、2026年9月9日の第1回ワーキンググループから、10月13日の第3回までを扱います。 それ以前(8月)は当社内での試作段階で、皆様にお見せしたものはありません。

時点検証対象 正解
(分母)
上位3,000件で
見つかる件数
上位20%で
見つかる件数
その回で入れたもの
9/09
第1回WG
62,9641,116 538件
48.2%
— 規程 別表19項目との照合に、分類記号の実績を足しました
9/17
ステコミ
62,9641,116 742件
66.5%
954件
85.5%
簿冊名がそのまま一致した実績を足しました(709件→742件)
10/01
第2回WG
64,4541,116 785件
70.3%
985件
88.3%
所属の移り変わりを手がかりに足しました(742件→771件→785件)
10/13
第3回WG
64,4541,116 件数の数え方そのものを
変えました(第5章)
似た簿冊を「束」にまとめるやり方に切り替えました
「上位3,000件で見つかる割合」= AIが可能性の高い順に並べ替えたとき、上から3,000件までに、 引き渡すべき1,116件のうち何件が入っているか。9/09だけ並べ替えではなく振り分けのため、比較用の参考値です。
一覧に見当たらない21件は、どの時点でも入りません。したがってこの割合は最大でも 1,095÷1,116=98.1% です。

3うまくいったこと

① 分類記号が、いちばん素直な手がかりでした

簿冊名の言葉だけを見るより、分類記号ごとの過去の引渡実績を使ったほうが当たりました。 「この記号の簿冊は、全体平均の何倍の割合で引き渡されてきたか」という形で使っています。

② 同じ簿冊名が過去に引き渡されていたか

年度違いで同じ簿冊名が繰り返し登録されています。 過去に引き渡された簿冊名と同じなら、今回も引き渡される可能性が高い。 これで 709件 → 742件 に増えました。

③ 「所属が移った」を、4つに分けたこと

担当所属と作成所属名が違う簿冊に注目しましたが、最初は1つの目印として扱っていました。 組み合わせごとに数え直したところ、まったく性質の違う2種類が混ざっていました。

担当所属 ← 作成所属名件数 引渡率意味
子ども家庭企画課 ← 家庭支援課4370.00% 名前が変わっただけ。1件も引き渡されていません
貝塚子ども家庭センター ← 岸和田子ども家庭センター2680.00%
市場・検査指導課 ← 流通対策室5119.61% 仕事そのものが移った。全体平均の10倍以上
ブランド戦略推進課 ← 流通対策室15118.54%

1つの目印では、この2つが平均4.94%に潰れていました。 組ごとの実績/作成所属名そのものの実績/名前の近さ/すでに無くなった所属かの4つに分け、 771件 → 785件 に増えました。

④ 似た簿冊を「束」にまとめたこと(今回・いちばん大きい)

満了簿冊を 担当所属 × 分類記号 × 保存期間 でまとめると、12,677の束になります。 一覧の中にある1,095件がどこにあるかを数えると——

12,677
束の総数
613
引き渡すべき簿冊が
1件でも入っている束(4.8%)
4,966
その613束の中身の合計
全体の7.7%
59,488
引き渡すべき簿冊が
1件も入っていない束の中身
これまでで、いちばん効いた発見です
一覧の中にある1,095件は、12,677束のうち613束にしか入っていません。 その中身を全部足しても4,966件(全体の7.7%)です。
「64,454件を3,000件くらいに」というご期待に、約5,000件という水準でなら応えられます。

4うまくいかなかったこと

記録として、効かなかったものも残します。

① 各部局の沿革20本(9/27にいただいたもの)

所属の移り変わりを正確にたどれると考えて読み込みましたが、 担当所属221種のうち186種(84%)が沿革に出てきませんでした。 とくに出先機関(事務所30種・センター15種)はほぼ100%が未掲載で、 いちばん効いている組み合わせが軒並み載っていませんでした。 精度は 71.7% → 72.0%、誤差の範囲です。

方向性は合っていて、たどれた26組では「機能が移った」9.43%/「名前が変わっただけ」5.16% と、 きれいに分かれています。母数が足りないだけです。 (なお監査委員会事務局の沿革PDFは5ページすべて画像で、文字が取り出せませんでした。 ここは正解100件・全体の9.1%を持つ最大の所属です。)

② 簿冊年度を手がかりに足すこと

「古い簿冊ほど歴史的文書になりやすいのでは」と考えて試しましたが、 59.1%と、かえって下がりました。

ここで一つ、大事なことが分かりました
簿冊年度を足すと、計算上の上限は上がります。ところが実際の精度は下がりました。
「上限が上がること」と「精度が上がること」は別です。 上限は天井の高さであって、到達点ではありません。

③ 「庶務、総務、雑件」で登録された86件

ご提供いただいた86件は分類CDがすべて B3(旧システムの体系)で、 満了簿冊一覧の E-xxxxx 体系とは別でした。突合すると一致0件/86件。 年度も令和4〜7年度でまだ保存期間中のため、今年の64,454件には含まれていません。

したがって今年の精度には効きません。来年度以降に満了してくる分の判断材料として使えます。

5いちばん大事な方針転換(今回)

これまでの説明を取り下げます
当社はこれまで「上位◯件を見れば◯%まで届きます」という形でご説明してきました。 これは結果として「残りは見なくてよい」という提案に読めてしまいます。
公文書は一度廃棄すると戻りません。「この分は見逃してよい」というご判断を、 大阪府にお願いするつもりはありません。この形での提案は取り下げます。

正直に申し上げると

1件ずつ順番に見ていくやり方では、一覧の中にある1,095件すべてを見つけるのに59,968件(全体の93.0%) を確認する必要があります。つまり、件数はほとんど減りません。

そこで、数え方を変えました

束の順に開いていく(開いた束は中身を全部見る)やり方だと、こうなります。

一覧の中にある1,095件の…束で見る 1件ずつ見る(従来)
95%が見つかるまで11,546件(17.9%)18,752件(29.1%)
99%が見つかるまで12,681件(19.7%)32,557件(50.5%)
100%が見つかるまで30,258件(46.9%)59,968件(93.0%)

残りは「見ない」のではなく「束ごと確認する」

引き渡すべき簿冊が1件も入っていない束のうち、5,468束(52,892件)は2件以上がまとまっています。 束ごとに1回確認すれば片づきます。

いまの作業束で見る方式
1件ずつ中身を見る64,454件約5,000〜12,700件
束ごとまとめて確認—12,064回(59,488件ぶん)
画面上の操作回数64,454回約17,000回(約1/4)
全件に目が通るか通る通る
考え方
見る件数を減らすのではなく、同じ判断を1回にまとめます。 だから見逃しは増えません。「捨ててよいか」のご判断をお願いする必要もありません。
ただし「作業時間が1/4になります」とは申し上げません
減るのは画面上の操作回数です。214件がまとまった束を1回で確認する操作は、 簿冊1件を見るよりは時間がかかります。
現在の仮選別は約240時間・担当2名・1件あたり約12秒と伺っております。 束で見る方式にした場合に実際どれだけ短くなるかは、 画面を実際に使っていただいたうえで測らせてください。いま数字でお約束はいたしません。

6こちらの誤りを、4点訂正しました

いつ申し上げていたこと正しくは
9/17→10/011,490件は簿冊名が空欄の行です 簿冊名の空欄は0件。初回提供に含まれていなかった1ファイル(北河内府税事務所)でした
9/17→10/01簿冊名で判断する限り上限は89.0%です 89.1%は4項目だけで測った数字でした。使う列を増やせば上限自体が上がります。
なお、この「上限◯%」という言い方そのものも改めます(第7章①)。
10/01→10/13完全に重複している行が1行あります 6組12行です。うち2組4行は全22項目が完全一致(別添②)
10/01→10/13分類記号が空白の44件があります 分類記号の空白は0件。空白なのは「公文書館仮選別」列でした(別添③)

後の2件は、いずれも「どの列の話か」を書いていなかったことが原因です。 10月1日に「主語がないから、どれを指しているのか分からない」とご指摘いただいたことと、同じ根っこでした。 以降、件数を申し上げるときは「どの列の・どの所属の・いつ時点の」を必ず併記します。

7いま分かっている限界

① 項目だけでは見分けられない簿冊が、66件あります

満了簿冊一覧の中に、項目の中身がまったく同じなのに、片方は引渡・片方は対象外という 組み合わせがあります。この場合、どんなAIでも見分ける材料がありません。

判定に使う項目見分けがつかない
組み合わせ
そこに含まれる
引渡すべき簿冊
簿冊名・分類記号・保存期間・担当所属(4項目)85通り / 334件136件
いただいた全列(7項目)33通り / 195件66件

つまり、一覧の中にある1,095件のうち66件は、項目を見るかぎり「対象外」の簿冊と区別がつきません。 残る1,029件は、原理的には見分けられます。項目を増やすと、この66件がさらに減ります。

これまで「上限94.3%」と申し上げてきた数字のことです — 言い方を改めます
1,029 ÷ 1,095 = 94.3%。この割合を「上限」と呼んでご説明してきましたが、 「AIの精度が94%」という意味に受け取られやすい言い方でした。失礼しました。
これは精度ではなく、「項目だけで見分けられる簿冊が何件あるか」という数え方です。 今後は件数(66件)でご説明します。
あわせて ──「正答率◯%」という言い方は、この仕事では使いません
引き渡すべき簿冊は64,454件中わずか1,116件(1.73%)です。 すべてを機械的に「対象外」と答えるだけで、正答率は98.30%になります。 1件も見つけていないのに、です。
正答率は、この仕事の出来を測る指標になりません。 当社が見ていただきたいのは、「何件見れば、引き渡すべき簿冊の何件が見つかるか」と、 「見つからなかったのは何件か」の2つだけです。

② 100%の保証は、機械だけではできません

だからこそ、残りの束も「まとめて確認」という形で必ず目を通していただく設計にしています。

③ 正解が1年分しかありません

いまお預かりしている正解は1,116件・1年分だけです。 これがAIの判断の裏づけのすべてで、精度を決めている最大の要因です。

④ 簿冊の中の文書情報は、ご提供が難しいと伺いました

10月1日に「そもそも取れない/取り込めない」とのご回答をいただき、この線は取り下げました。 簿冊単位の情報だけで到達できる範囲を前提に設計し直しています。

⑤ まだ測り直せていない数字があります

判定方式のうちルール方式の数字は62,964件時点のままです (圧縮47.7%・見逃し42件など)。誤りではありませんが母数が違うため、 該当箇所には「9/17時点・62,964件での実測」と明記しています。測り直しは次の宿題です。

8大阪府にお願いすることは、1つだけです

10月1日のワーキンググループでは、当社から「お調べいただけますか」というお願いの仕方を してしまいました。本来これらは、当社が明らかにすべきことでした。 あらためて整理し、当社で判断できるものは、すべて結論を出しました。

A|当社で決めたこと(ご指摘がなければ、このまま進めます)

内容当社の結論
一覧に見当たらない21件 (a) 8件=保存期間の延長/(b)〜(e) 13件=登録の振り直しとして扱います。 いずれも精度の計算には含まれないため、どちらであっても実務上の支障は出ません
重複している6組 (A) 2組4行は重複登録と判断します(2行とも対象外のため、母数は次回の測り直しで 64,452件に揃えます)/(B) 4組8行は別の簿冊として扱います
照合キー 簿冊副題を加えた7項目に変更します。(B) の4組が6項目では区別できないためです
分類記号「B3」 旧システム由来の目印として扱います。判定上の特別扱いはしません
「公文書館仮選別」が空白の44件 26件(59%)が都市整備部 経営管理課に集中し、出典も1ファイルだけです。 判断の保留ではなく記録漏れと判断します。正解には含めず、 AIの上位に来たものは「要確認」として必ずお出しします
簿冊の中の文書情報 ご提供が難しいと伺いましたので取り下げます。簿冊単位の情報だけで設計し直します

10月13日までに特段のご指摘がなければ、この6点はこのまま確定させていただきます。 大阪府側でお調べいただく必要はございません。

B|大阪府にしかできないご判断(これだけお願いします)

別添③ ── 「公文書館仮選別」列が空白の44件の、引渡/廃棄のご判断
この44件は、引き渡すかどうかのご判断が記録されていない状態です。 うち42件は原課側ですでに「仮廃棄」に設定されています。
このままですと、公文書館のご判断が記録されないまま廃棄に進むおそれがあります。 引き渡すかどうかは大阪府の権限に属することで、当社が代わりに決めることはできません。
10月13日までにご確認いただけますでしょうか。

C|お借りできれば精度が上がるもの(無い場合も、このまま進めます)

お願いするものあると何が変わるか無い場合
過年度の仮選別データ
(前年度・前々年度)
正解が1年分しかないことが、いまの成績を決めている最大の要因です。 年度が増えれば、項目だけで見分けられる簿冊が増えます。 加工は当社で行いますので、費用もお手間もいただきません。 今年の1,116件だけで進めます。束で見る方式は、1件ずつの方式より 正解データへの依存が小さいため、無くても成立します
所属コードの新旧対応表
(旧コード・旧名称・新コード・新名称・改編年月日)
組織改編で所属名が変わった・課が移ったケースを、機械的に追えるようになります いまどおり、データの中から推定して進めます (9/27の沿革20本では記載が16%で足りませんでした)

どちらも「探してでも出してください」というお願いではありません。既にある形でお借りできるようでしたら、という趣旨です。